私たちの体は食べたものでできている
日々の診療の中で、患者さんから食事や栄養についての質問を受けることが多々あります。たとえば、ガン患者さんから、どのような食事を摂ればよいのでしょうかと聞かれたときに、一般的な回答としてはバランスのとれた食事を心がけましょうといった回答になるわけです。
では、バランスのとれた食事とはいったいどんなものなのでしょう?
そもそも健康な人、手術後の回復期にある患者さんと転移再発ガン患者さんでは、もともとの栄養状態、代謝も違うわけですから必要とする栄養素の種類も量も違ってきますよね。
今回から、ガンや生活習慣病と栄養、免疫について考えてみたいと思います。
私たちの体は食べたものでできている
私たちのからだは、およそ60兆個、260種類の様々な細胞で構成されているといわれていますが、細胞の種類によって、それぞれの寿命が決まっていることを意識されている方はあまり多くはいらっしゃらないと思います。
寿命の短い細胞の代表を挙げると、私たちのからだを細菌から守ってくれる好中球という白血球は、せいぜい2日から3日、腸の粘膜細胞は1日から2日程しか生きていません。
正常細胞は、それぞれの寿命が来るとアポトーシスという自殺を起こして、古くなった細胞が死んで新しい細胞と入れ替わることで私たちの体を維持しているのです。一説によると毎日およそ4000〜5000億個の細胞が死に、それとほぼ同数の細胞が生まれていて、入れ替わりに要する時間は細胞の種類によって違いますが、数年もすれば大部分の細胞が入れ替わるといわれています。
なぜ細胞の寿命や細胞の入れ替わりに触れたかというと、私たちのからだでは日々大量の細胞が作られていて、その材料となる栄養素を食事として取り込んでいるということ、すなわち私たちの体は食べたものでできているということを再認識していただきたかったのです。
当然、食事の質が生まれてくる細胞の質に影響することが考えられるわけです。質の悪い食事は質の悪い体内環境や質の悪い細胞を生み、細胞の機能不全を引き起こし様々な病気を発生させる要因となることも想像に難くありません。