がんは炎症が大好き
患者さんから、がんの原因について質問されることが多々あります。
がん細胞は、正常細胞が様々な外的、内的因子によって遺伝子異常を起こしてしまうことによってがん化すると考えられています。
内的因子としては、がん原遺伝子の異常発現やがん抑制遺伝子の変異等が考えられます。
外的因子としていろいろな要因が考えられますが、感染症や食事と喫煙を含めた生活習慣が大きな原因と考えられます。
がんの原因となる感染症としてよく知られているものにB型・C型肝炎ウイルス感染による肝細胞がん、ピロリ菌感染による胃がん、ヒトパピローマウイルスによる子宮頚がんがありますが、いずれもそれぞれの臓器に慢性炎症を伴っているのです。
感染症に限らず、アスベストによって引き起こされるアスベスト肺から胸膜中皮腫、胆石から引き起こされる慢性胆のう炎から胆嚢がん、慢性膵炎から膵臓がん、さらには生活習慣病の代表とも言えるメタボリック症候群における内臓脂肪の肥満増加と肝がんなどのように発癌の過程においてそれぞれの臓器の慢性炎症が存在していて重要な役割を果たしていると考えられています。
がん細胞には様々な要因によって多様な遺伝子異常が引き起こされていることは知られていますが、実は、がんが発生してきた慢性炎症を起こしている組織の正常細胞にも遺伝子異常が蓄積していることが解っています。
慢性炎症組織において活性化されたマクロファージなどの炎症細胞が活性酸素種や活性窒素種を生成することでDNA損傷を引き起こしてしまうと考えられています。
また、慢性炎症組織において炎症刺激(IL-6、TNF-αなどの炎症性サイトカイン)によって遺伝子編集酵素(AID)が誘導され、この酵素によってDNAに変異が導入されることで遺伝子変異が生成されてしまうことも考えられます。
体の中で炎症を繰り返すことにより細胞の遺伝子レベルで変異を引き起こし発がんを来してしまうことがお解りいただけたでしょうか。