慢性炎症を防いで病気の予防②
炭水化物の過剰摂取やカロリー過多により引き起こされるメタボリック症候群では内臓脂肪の肥満による増加が起こることは皆さんもご存知のことと思います。
この肥満した内臓脂肪組織に浸潤してきたマクロファージからはIL-6やTNF-αなどの炎症性サイトカインが、肥満脂肪細胞からもIL-6やTNF-αなどの炎症性サイトカインや遊離飽和脂肪酸、アンギオテンシノーゲン(アンギオテンシンの分泌を高め血圧を上げる)などのいわゆる悪玉アディポサイトカインが産生されてしまうのです。
このようにして肥満化した内臓脂肪組織では浸潤してきたマクロファージなどの免疫細胞と肥満状態の脂肪細胞の間で慢性の炎症状態を作り上げてしまいます。
これに対抗するには、簡単なことなのですが体重を落とすことで肥満化した脂肪細胞が元のスマートな細胞に戻ります。するとインスリンの感受性を高めたり満腹感を認識するような善玉アディポサイトカインを産生するようになるのです。
遊離飽和脂肪酸が炎症を引き起こすことに触れましたが、実は私たちが普段食している油にも炎症を起こしやすい油とおこしにくい油があります。
主に動物脂肪に含まれる長鎖飽和脂肪酸や植物性脂肪の中のリノール酸などのオメガ6脂肪酸は炎症を誘起しやすい油なのです。特にリノール酸やアラキドン酸から誘導されてくるプロスタグランディンやロイコトリエンは炎症メディエーターと呼ばれ炎症を誘起します。
一方、オメガ3脂肪酸で植物由来のα—リノレン酸や魚油由来のDHA、EPAは抗炎症性で特にDHAやEPAから誘導されてくるプロテクチンやレゾルビンは抗炎症メディエーターと呼ばれ抗炎症作用を発揮します。
日々の食事の中で肉中心の副食から魚中心の副食に替えてみたりオメガ3脂肪酸で植物由来のα—リノレン酸を多く含む食用油を使うようにすることで炎症を起こしにくい体に変えることも可能だと考えます。
善玉腸内細菌を活発化するためにプレバイオティクスとして野菜や穀類に含まれる食物繊維を摂ったり、プロバイオティクスとして納豆、味噌、醤油、漬物などの発酵食品を摂ることが免疫バランスを正常化し慢性炎症を抑えるためにも有用であると考えます。
今回は、がんと慢性炎症について触れましたが、免疫がかかわるアレルギーや自己免疫疾患に限らず、肥満や糖尿病、心疾患、COPDなどの呼吸器疾患さらにはアルツハイマー病などの神経疾患に於いても慢性炎症が悪さをしていると考えられています。